クラウドでのレンダリング実験開始

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CGWORLD 2011 -クリエイティブ カンファレンス

雑誌CGWORLDは「コンピュータグラッフィックス・映像クリエイター総合誌」として1998年に創刊されています。現在では、コンピュータグラッフィックス(CG)や映像を専門に扱った月刊の定期刊行物としては国内唯一の存在であり、業界に特化した情報や記事内容は、CGに関連する方々への最新の情報源として期待され続けています。クール・ジャパンと云われて久しいですが、ベースになるCG・映像制作技術の飛躍的な発展に貢献した雑誌です。

文京学院大学 本郷キャンパス

そのCGWORLDが、初めてその名前を冠した一大カンファレンスである「CGWORLD 2011 -クリエイティブ カンファレンス-」が2011年10月23日の日曜日に閑静な住宅地に隣接する文京区の文京学院大学 本郷キャンパスで開催されました。まだ色づくには早いですが、半分だけ黄色くなった楓の落ち葉が朝方より降り出して濡れた路面に貼り付いている様には、日一日と秋が深まっていくことに気づかされます。

CGWORLDを発行する株式会社ワークスコーポレーションの株式を、ハリウッドのCG技術を日本へ伝える雑誌CinefexCinefexなどの発行で有名な株式会社ボーンデジタルが取得したことも、これだけの大規模なイベントが開催されるに至ったと理由と思われます。著名なスピーカー達のメイキングストーリー、技術を掘り下げるプレゼンテーション、パネルディスカッションなど、クリエイターには垂涎のセッションがひしめいています。約1000名の参加者は、会場内を小走りに移動し次のセッションを目指す引きもきらない状態でした。そんな中、我々は初めてのサブジェクトでのプレゼンテーションに気持ちは張り詰めていました。

Blender-; オープンソース3Dソフトウェア

Blenderは数奇な歴史を持つソフトウェアです。オープンソースで3Dコンピュータグラフィックスソフトウェアであり、3Dモデルの作成、レンダリング、アニメーションに加えて、コンポジット機能も備えているものです。最近、Blenderが実用域に達していると多くの方々が語られていますが、次のビデオを見てもらえれば、瞭然たるものがご理解いただけます。毎年1回開催される世界規模で一番大きいCGイベントであるSiggraphで今年発表されたものです。実際の映画やゲーム、コマーシャルフォルムで使われたものを編集したデモンストレーションビデオをご覧下さい。

オープンソース on クラウド; Blender- on IIJ GIO

レンダリングとは、3次元グラフィックスで数値データとして与えられた物体や図形に関する情報を計算によって画像化することをいいます。CGによる映像制作では、デザイナーが手を動かさなければならない作業の後は、必ずコンピュータリソースによるレンダリング計算の需要が発生します。この処理を行うには複数台のクラスタリングのサーバー環境を自社設備として保有する必要があります。しかし一般的に、年間を通しての稼働率は低く、また稼働時はどれだけでもCPUリソースが必要になります。クラウドの定義の1つである「所有から利用へ」が待ち望まれた分野です。そこでライセンスの問題が発生しないオープンソースソフトウェアでレンダリング計算をクラウドで実験してみることになりました。

菊池司先生の作品今回の実験を実施してくれた菊池司先生は、現在はCGを指導して研究されています。しかも興味深いのは、博士論文が「雲のビジュアルシミュレーション法の開発に関する研究」ということで、本物の雲(クラウド)を研究していたことです。論文をまとめている頃は、見晴らしのよい丘に登って暗くなるまで雲を眺めていたそうです。またUnixやLinuxでシミュレーションをガリガリ行っていたこともあり、菊池先生のプログラミングのバックグランドが、クラウドでの円滑な実験の助けになりました。

菊池先生と私が20分ずつ説明して、最後にパネルディスカッションでまとめる時間割でセッションに臨みました。

菊池先生と弊社清水

菊池先生は、研究室にある環境とクラウド環境とのレンダリングのパフォーマンスを説明されました。特にHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用にチューンしているわけではない弊社クラウドのIIJ GIOですが、予想外に良いパフォーマンス結果が出ました。型式の古いノートPCからクラウド環境にアクセスし、サクサク動いたご自身の「クラウドエクスペリエンス」を楽しそうに説明されていました。今回は第一段階の実験でしたが、今後の展開が楽しみな結果でした。更に実験を続けていきたいと思いますので、実験に参加されたい方はご連絡ください。

資料その1資料その2

クリエイティブを変える

オープンソースとクラウドは、「クリエイティブを変える」可能性があることを菊池先生は示唆していました。とても含蓄深い言葉なので、私がどこまでここで著すことが出来るか判りません。ご了承下さい。

脈絡としては、まず前提条件としてCGはお金がかかるものだとの課題認識からスタートしました。高校生でも3DCGが使えてレンダリング環境を利用出来れば、入口を気軽に広げることで、傑出した才能が見出されるかもしれない。またクラウドを利用することで、場所という概念から開放され、ワークスタイルの無限の可能性や、制作プロセスの多様性も追求できることを論及されました。

日本のコンテンツ産業を支えているのが、業界の大半を占める中小の制作会社といわれています。もしこの実験環境が実用化されると、初期投資を必要とせず、リソースが必要な時に必要なだけ使えることが実現します。設備を持たない会社や個人でも、高品質なCGを引っさげて海外の荒野へ旅立つことも叶います。全てのCGクリエイターがクールジャパンをもう一度盛り上げられるような環境をIIJもサポートしていきたいです。

更に菊池先生は、コンテンツ産業の裾野を広げることや、国際競争力の強化を考えると、ビジネス分野と教育、そして自治体のトライアングル構造の連携を提案されました。浮世絵の頃から、日本文化はサプライズと賞賛され続けています。いろいろな関係者が手を結んで、我々の世代で更に国際化が進んだと言えることを目指していきたいです。

(マーケティング本部 企画部 清水 博)

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