すぐに実施したいITでの節電対策(その3)

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今回はもう1つ、大きな節電効果が期待されるPCのクラウド化について記載します。

PCのクラウド化とは何をするのか?といいますと、普通にシンクライアント化することを指しています。ただし、シンクライアントの先にあるPCの本体に相当する部分を、仮想化とクラウドサービスを用いて節電を行うという仕掛けです。

前の記事と同じく、例として東日本に本社のある従業員3,000名の会社で1人1台PCを保有しているケースを考えてみたいと思います。

まずは構成の違いを見てみましょう。
シンクライアント化のパターン

図の一番上が現状で、東日本にPCを3,000台保有するというケースです。
シンクライアントの導入には、IIJ GIO仮想デスクトップサービスをご利用になると比較的簡単です。東日本側の端末は既存のPC資産をそのまま活かすのであれば、仮想デスクトップに接続するシンクライアントのソフトウェアを既存PCにインストールすれば利用可能になります。例えば仮想デスクトップサービスでXenAppを用いる場合は、Citrix社のReceiverソフトウェアをインストールすることになります。これが図の真ん中のパターン1です。

最も節電効果が期待されるのは、端末そのものをシンクライアント専用端末にすることです。これが図の一番下のパターン2です。シンクライアント専用端末はメインフレーム時代のダム端末と同じで、キーボード・マウス操作をセンター側の仮想デスクトップサービスに伝え、転送されてきた画面の差分データのみ表示するという極めてシンプルな作業のみを行います。この処理は通常のPCの処理よりも遥かに軽いため、処理能力が低いCPUで十分に動作します。またHDDが必要ないので駆動部品がありません。これによってシンクライアント専用端末は、通常のPCよりも大幅に消費電力が低いのが特長です。(駆動部品がないため故障率が通常のPCよりも低いという特長もあります)

さて、どれぐらい節電効果があるのか、サンワサプライさんが出されている「ワットチェッカー」を使って、GIOマーケティング部の加藤さんと荒木さんの協力のもと、実際にPCの消費電力を測ってみました。私は以前の記事でも書きましたが、会社ではシンクライアント専用端末を使っています。
ワットチェッカー
ワットチェッカーの使い方は簡単で、通常電源プラグと電源タップの間にワットチェッカーをはさむだけです。これでリアルタイムの消費電力が液晶モニターに表示されます。モニターの数値が刻々と変わっていくので、非常にライブ感を感じる(?)機械です。(ちなみに写真のIIJロゴは私が趣味でナノブロックを使って作ったものです。実験とは何の関係もありません)

シンクライアント専用端末(HP t5570)シンクライアント専用端末はHP社のt5570を使っています。
実際に仮想デスクトップにアクセスした時の消費電力は、通常のテキスト入力程度であれば10Wで安定していました。YouTubeで画面変化が大きい動画を流してみると、10W~13Wを行ったり来たりしていました。また、仮想デスクトップ側にベンチマークソフト 「CrystalMark 2004 R3」を入れて動かしてみましたが、この時シンクライアント専用端末側の消費電力は10Wのままでした。(手元の端末では何もしていないので当たり前ですが…)

一方で、デスクトップPCはDELLのOptiplex780を使っています。こちらはカタログスペック上、最大消費電力が約75Wとなっています。実際に測定してみたところ、通常時は45W程度、シンクライアントの実験同様に動画を流してみるとおおよそ57W~60W程度を行ったり来たりしていました。同じくベンチマークソフトを動かしてみると、65W~67Wを行ったり来たりしていました。

デスクトップPCにシンクライアント接続ソフトをインストールして、仮想デスクトップに接続をした時の消費電力を測ってみました。この時はいろいろ操作をしても安定して40W~45W程度でした。時々画面と関係なく55W程度までワット数が上がったのですが、おそらくWindows上でバックグラウンドジョブが何か走っているためだと思われます。

最近のモニターはもはやCRTではなく、液晶が主流であろうと思います。液晶モニターはシンクライアント専用端末でも通常のデスクトップPCでも、同じモニタを使っていれば消費電力も同じです。参考までに液晶モニターの消費電力を測定してみました。三菱電機の23inchワイドのモニター(Mitsubishi Diamondcrysta RDT232WLM)です。こちらは安定して26W~27W程度でした。

シンクライアント専用端末は消費電力が多い時で13Wでしたから、モニター込で最大40W程度になります。デスクトップPCの場合、あまり重い処理をしない時はモニター込で70W程度。それなりに重い処理をさせた時に90W超になります。
ここで気になるのがノートPCです。実験ではIBM Lenovo X201を使ってみました。デスクトップPCの場合との違いは、小さいとはいえモニターと、バッテリーがついていること。電源を切っていても充電モードの場合は32W消費していました。しかし、通常時は45W(モニター込)、動画再生時で54W、ベンチマークソフト利用時で62Wでした。

以上を整理すると下の表のようになります。

測定対象 機種 通常時 動画再生時 ベンチマークソフト利用時
デスクトップPC DELL
Optiplex780
40~45W 57~60W 65~67W
デスクトップPC+シンクライアントソフト DELL
Optiplex780
40~45W 40~45W 40~45W
ノートPC IBM Lenovo
X201
45W 54W 62W
シンクライアント専用端末 HP t5570 10W 13W 10W
液晶モニター Mitsubishi
RDT232WLM
26~27W 26~27W 26~27W

ここで、3,000台のPCにシンクライアントソフトを入れて仮想デスクトップ化するパターン1と、デスクトップPCをシンクライアント専用端末に置き換えて仮想デスクトップを利用するパターン2のそれぞれの効果を整理してみます。端末側の消費電力は上の表のとおりですが、仮想デスクトップサービス側の消費電力を計算してみましょう。
効果をシビアに見るために、1台の物理サーバへの仮想PCの集約率が最も低いXenDesktopを利用した場合を想定します。インストールするアプリケーションの消費メモリ次第ですが、現状のIIJ GIOの環境では、1台の物理サーバに30台の仮想PCを載せることを標準実装としています。その場合、3,000台の仮想PCは物理サーバ100台に相当します。通常のサーバよりもメモリを多めに積んでいるので1台の物理サーバあたり400Wの消費電力とします(これはかなり多めに見積もっています)。その場合、仮想デスクトップサービスで4kWの消費電力となります。
また、1人あたり25GBのHDDを割り当てるとすると、75TBのストレージが必要になります。前回の記事でご紹介したとおり、50TBのストレージでおおよそ4.5kW見ておけばよいため、9kW見ておけばIIJ GIOストレージの消費電力としては十分でしょう。以上のことから、仮想デスクトップサービスを3,000人規模で使う場合にはIIJデータセンター側で13kWの電力消費をします。

以上の情報を整理すると以下の図のようになります。
IIJ GIO仮想デスクトップサービス利用による節電効果

シンクライアント専用端末に置き換えるとかなりの効果が出ます。この場合、3,000台規模で137kWの節電効果が見込まれます。
前回の記事でサーバの節電効果がおよそ60kWだったことに比べて大きな効果が出ているといえるでしょう。ただし、サーバと違ってこまめにPCの電源を消すことを行えば、就業時間を含め電源が入っている時間は10時間程度になり、土日を考えるとさらに消費電力を抑えることができるでしょうから、実際の効果は

137kW × 10h ÷ 24h × 5d ÷ 7d ≒ 40.8kW

程度となります。前回のサーバの対策と合わせると丁度100kW程度の節電効果になると言えます。

これは、3,000人規模の事業所全体の消費電力が1,102kWですから約9%に相当します。25%の削減目標に対して約9%ですから、クラウド化によって全体の1/3強の貢献が可能であるということになります。

利用しているPCが新しい節電タイプなのか、比較的古いマシンなのか、3D CADやゲーム開発機のようなハイスペックマシンなのか、配布しているPCはノートPCが主なのかといったことによっても消費電力は大きく変わります。あくまで1つのシミュレーションとしてみて頂ければ幸いです。

まずやらなけばならないことは、従業員全員に、席を外す時はこまめにモニターを消す、帰社時にはPC、モニターの電源を落とすということを徹底することです。さらにリースアップのタイミングなど古いPCがあれば、仮想デスクトップサービスを利用してシンクライアント専用端末にリプレースするなど、少しずつでも対応をされるとよろしいかと思います。また仮想デスクトップサービスは先に連載しました災害対策のテレワーク環境としても有効なため、この機会にPC調達の在り方について見直しをされてはいかがでしょうか?

まずは、従業員の意識、行動で行う節電が先にあり、さらにシステム側で補助的に削減できる仕掛けを入れるというのがITの節電のあるべき姿かと思います。このあたりIIJでお手伝いできることはたくさんございますので、お気軽にお声掛け頂ければ幸いです。一緒に出来ることを考えられればと思います。

節電対策の連載はこれで終了いたします。ご覧頂きありがとうございました。

文責:IIJ GIOマーケティング部 部長 米国DRII CFCP 小川晋平

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