すぐに実施したいITでの節電対策(その2)

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前回の記事でふれた通り、東京電力、東北電力管内にマシンルームがある企業にとっての節電対策には、下記の2つの方法があります。

1.電力消費を抑える施策:関東や東北地方の物理サーバを仮想化することで消費電力そのものを抑える
2.電力消費地の東京電力・東北電力管外への移転:例えば関西に設備があるクラウドサービスの活用

まずは1.の、物理サーバの仮想化により消費電力を抑える方策の効果について見ていきましょう。

1つのモデルケースを見ていきたいと思います。

「従業員が3,000人規模の会社でWindowsサーバ50台、Linuxサーバ50台、計100台の物理サーバが自社のマシンルームにある。CPUの平均稼働率は20%未満、バッチ処理等で20%を超えて100%張り付くようなタイミングがあるサーバ(上位機種)は全部で20台とする。社内にある総ストレージ容量は物理容量が50TB程度のミッドレンジストレージが3台ある。」

上記の例で、サーバとストレージをクラウドに持っていくことで、どれぐらいの節電効果がありそうかを見てみましょう。
具体的なハードウェア名称があった方が分かりやすいと思いますので、ここではHP社のサーバ製品とEMC社の1筺体、NetApp社の2筺体のストレージが自社のマシンルームにあるとします。マシンルームのLANは、クラウド移設後も社内LAN用のコアスイッチとして残ります。エッジスイッチはいくつか削減できるでしょうが、削減可能な電力量としては微量なので一旦ここでは無視します。(本来は、SAN構成に必要なHBA搭載可能な拡張スロットのある、もう少し大きなハードウェア(DL380シリーズ等)を書くべきですが、ここでは電力消費量の計算の簡素化モデルのため、DL360で記載しております)

例)本社での総消費電力

100台の内訳は、以下のように仮定します。

機種 1台あたりの消費電力 台数 総消費電力
DL320G6(※1) 最大224W 40台 8,960W
DL360G6(※2) 最大413W 60台 24,780W
EMC CX4(※3) 3,870W 1筺体(物理54TB) 3,870W
NetApp FAS3120(※4) 4,302W 2筺体(物理57.6TB x 2) 8,604W
小計 サーバ100台
ストレージ3筺体
46,214W
  • (※1):Intel Xeon E5503 2.0GHz 1P/2C x 1; Memory 6GB; HDD SAS 450GB x 4; NIC PCI Express I/O x 2; 電源x1
  • (※2):Intel Xeon X5560 2.80GHz 1P/4C x 2; Memory 16GB; HDD SAS 300GB x 8; NIC PCI Express I/O x 2; 電源x2
    それぞれHP Power Advisorにて計算
  • (※3):FC 300GB 15krpm x 15玉(約300W) x 12シャーシ(物理54TB)+プロセッサシャーシ x 1(最大270W)
  • (※4):SAS 300GB 15krpm x 24玉(約480W) x 8シャーシ(物理57.6TB)+コントローラ x 1(1,577BTU/h=462W)

これをIIJ GIOコンポーネントサービスのクラウド環境に移行した場合には、以下のような換算がなされます。

DL320G6は2コアのため、IIJ GIOのグレードではV40相当。ただし、20%しかCPUを使っていないので、1/4のV10でも大丈夫です。若干の余裕をみてV20を選択したとすると、V20が40台。これはIIJ GIOの現行設備の場合、物理サーバ5台に相当します。
DL360G6は8コアのため、IIJ GIOのグレードではV160相当。ただし、20%しかCPUを使っていないマシンが60台中40台あります。それらはV40で稼働できるため、V40が40台。残りの20台はV160となります。これはIIJ GIOの現行設備の場合、物理サーバ30台に相当します。
以上のことから、お客様環境にある物理サーバをクラウド環境に移行する(仮想化を活用する)ことで、100台の物理サーバが35台の物理サーバになります。IIJ GIOの物理サーバ1台あたりの消費電力はかなり多めに見て300Wであるため、サーバの消費電力は33,740Wが10,500Wへと減ることになります。仮想化することだけで約68%の電力削減ですね。

次に、2.の電力消費地を東日本から西日本へうつす効果を見てみましょう。

お客様はIIJ GIOの関西の設備を利用可能です。そのため、ストレージもクラウドサービス(IIJ GIOストレージサービス)を活用すれば、トータルで46,214Wを東日本から西日本へ電力消費地移行することが可能です。

お客様の環境によって異なりますが、マシンルーム内では1ラックあたり4kVA~6kVAの電源を用意されている企業が多いのではないでしょうか?6kVAでラックをたてる場合、IIJ GIOを使ってクラウド環境にサーバを移行すると、ラック7本強分の電力削減につながります。4kVAでラックをたてる場合は、実にラック約12本相当の電力削減となります。

クラウド環境への移行による効果

これが直接的な電力削減です。
あわせて、間接的な電力削減として、空調機の電力削減があります。こちらは冷房COP(Coefficient Of Performance)という冷却効率の指標から大よその消費電力を逆算可能です。
冷房COPは、

冷房COP = 冷却能力(kW)÷冷却消費電力(kW)

で表すことができます。上の例は50kW弱の熱に相当しますが、調べてみたところ、50kW前後の空調機の効率はいいもので冷房COPが3.5程度です。そのため、46,214Wの熱源を除去することを考えると、3.5で割った13,204Wが空調で必要とされる消費電力になります。

以上のことから、直接・間接の電力削減効果は、

46,214W+13,204W = 59,418W

となり、60kW近くの電力削減(ラック15本分(4kVA)換算)が可能となります。

さて、現状25%の消費電力削減を皆で取り組もうといているところですが、3,000名程の企業にとって、60kWの削減は全体の何%ぐらいの効果があるのでしょうか?これに関して財団法人省エネルギーセンターの「オフィスビルの省エネルギー」という資料を参考に計算してみます。一人当たり6㎡の執務スペースがあるとして、3,000名で18,000㎡。その他のスペースで2,000㎡確保している事業所だとすると、ちょうど上記レポートの20,000㎡のモデルの数値を参考にできます。この時、全体の消費電力量は単位平米・年あたり、1,737MJ/㎡・年となっています。オフィス全体でのエネルギー量を秒当りで計算すると、以下のようになります。

1,737×1,000,000(J/㎡)×20,000(㎡)/(365×24×60×60)(sec)
= 34,740,000,000,000/31,536,000(J/s)
≒1,101,600(J/s)

W=J/sのため、大よそ3,000名の事業所での消費電力はこのレポートから計算すると1,102kWとなります。この場合、60kWの削減は全体の約5.4%の削減に相当します。25%の削減目標に対しての約5.4%というのはITのサーバルームの節電対策でもそれなりのボリュームの貢献になっていると言えるでしょう。ここでは全部のサーバをクラウドに移行するケースとして約5.4%の貢献と書いていますので、仮に3割程度をクラウドサービスに移行する場合は約1.6%程度の節電効果になります。

さて、サーバのクラウド移行は電力削減効果があるというのは分かりました。
しかし、サーバの移行って難しくて現実的じゃないのでは?と思われている方が多いのではないでしょうか。
IIJ GIOコンポーネントサービスは、お客様のプライベートIPアドレス空間をそのままIIJ GIOのクラウド環境に持ち込むことが可能なため、アプリケーションの移植性が非常に高いのが特長です。もし現在、お客様環境内でVMwareをお使いの場合は、IIJ GIOのXシリーズを使ってVMware環境を用意し、そこに簡単に移植させることができます
何よりも、プライベートIPアドレスのセグメントをそのまま持ち込めますので、アプリケーション側の設定変更がほとんど必要ないということが一番のメリットです。

また、既存の設備を購入またはリースをしていて、まだ資産償却していないためにクラウドサービスを利用できるシステムとそうでないシステムが混在しているというのが一般的なのではないでしょうか?

IIJ GIOと持ちこみ設備との接続、自社マシンルームとの連携IIJ GIOコンポーネントサービスでは、そういったお客様固有の資産をお客様専用ラックにお預かりし、IIJ GIOのクラウド設備とプライベートネットワークで接続することが可能です。もちろん、お客様固有の資産は自社のマシンルームに置いたまま、クラウド化できるシステムのみIIJ GIOに移植し、WANを介してマシンルームとIIJ GIOを接続するという構成をとることも可能です。これらのケースは災害対策の連載の「すぐに手をうつべきクラウドを使った災害対策(その4:テレワーク環境)」の回で解説していますのでご参照くださいませ。
システムの移行自体はIIJのプロフェッショナルサービスのSEがサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。夏に向けて一番の課題は、回線の手配に時間がかかる点です。現状のお客様のWAN回線からIIJのデータセンターへ1本接続先を追加することで、社内のマシンルーム替わりにお使い頂くことが可能になります。この回線の手配が、混み合うと1か月以上かかるかと思います。そこにご注意頂ければと思います。

本稿をおさらいしますと、サーバ設備をIIJ GIOに移植することで

  1. 消費電力そのものを削減することができる(大よそ68%削減)
  2. 東日本のお客様の場合は、サーバ(ストレージ)の電力消費地を東京電力、東北電力管内から西日本へ丸ごと移すことができる
  3. サーバの移植は、プライベートIPアドレスが持ち込めるためアプリケーションの改修が必要なく簡単
  4. サーバの移植はIIJのプロフェッショナルサービスのエンジニアが丁寧にご支援

さらに、Windowsサーバのクラウドへの移植を極力自動化するツールを準備中です。こちらは近々発表できると思いますので、期待してお待ちくださいませ。

次回はもう1つ、大きな節電効果が期待できるPCのクラウド化についてご紹介したいと思います。

(次回に続きます)

文責:IIJ GIOマーケティング部 部長 米国DRII CFCP 小川晋平

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